こっちを向いて、恋をして。




「えっ、まだ話してないの!?」

目を真ん丸にさせて驚くのは、優衣。

パタパタと、薄力粉を振るっていた手が止まる。

「うん……」

力無く頷く、あたしの目の前にはチョコレート。

まな板の上。細かく刻んだそれを、お湯に浸けたボールに移し、あたしはゴムベラでちょんちょんと、チョコを突っついてみる。


優衣と、お決まりのお菓子作り。

時刻は放課後。
場所は、学校の調理室。

つまり、今日は調理部の活動日……火曜日。


「はぁ……」

曜日を意識すれば、自然と零れるため息。

これで2日……。

あれから朝日と、ひと言も言葉を交わしていない。


「大丈夫?」

心配そうに声をかける優衣に、「んー……」と、煮え切らない返事。

『大丈夫?』の意味するものが、朝日との関係を示すなら、正直少しヤバイかもしれない。

そう思うくらい、本当に何も話してなくて。目すら合わせていなくて。