「べべべ別にっ!」
慌てたあたしは、さっきまで近付きたくないと思っていた方向へ一直線。
全力で走り出した。
「……分かりやすいヤツ」
残していった彼が、そう言って苦笑したことなんて、知らず。
び、びっくりした……。
ハァハァと、上がった呼吸を整える。
てか、あたし……何しちゃってんの。
ちょっと考えれば、朝日が昨日のことをペラペラ人に喋る性格じゃないことくらい分かる。
それなのに、あからさまに逃げてしまった。
ほんとバカだ……。
自ら“会いたくない人”を追加してしまったという現実に、がっくりと肩を落とす。
……それに結局、来ちゃったし。
あたしが片手をついた先。
それはうちのクラスの下駄箱で、立っている場所は玄関。
結局、行きたくないと思っていた学校へと、辿り着いてしまった。
「……ふう」
小さく息を吐き、視線を少しだけ上に向ける。
すると見つけたのは、『石丸』の文字。