こんなことをしたって、意味ないけど……っていうか、教室にはもっと会いづらい人がいるんだけど。

次第に見えてきた校舎。

やだなぁ。
このままサボっちゃおうか……なんて考えて、

「はぁ……」

ため息をまたひとつつきながら、落ちていた小石を蹴った。

その次の瞬間。


「すっげーため息!」

「っ!?」


背後から掛けられた声に、ビクッと肩を飛び上がらせる。

それだけでも、寿命が縮んだって思うほど驚いたのに、振り返って声の主の顔を見て、更に寿命が縮んだ。


スポーツバッグを肩に掛けてこそいるものの、だらしなく下がったズボン。
見るからにチャラそうな風貌。

あたしに声を掛けてきたのは、サッカー部のあの、例の男子。


「何? 朝日と何かあった?」

にんまりと向けられた笑顔。

彼からしたら、多分ちょっとからかってみただけ……だったんだろう。

だけど『何かあった?』って言葉は、痛いくらいにグサッと刺さって。