気付いたら、嫌だ!っていう気持ちが先立って、あたしは朝日の頬を平手打ちしてしまってた。

当然朝日は、驚いた顔をして。

そこからはもう、彼がどんな顔をしていたか分からない。

あたしはただ、零れ落ちてしまいそうな涙を必死に堪え、朝日から顔を背け続けた。


そんな感じで、観覧車を降りてからも、普通になんて振る舞えるはずもなく。

「どうだった?」って、ニコニコしながら聞いて来ようとした優衣の言葉は、ただならぬあたし達の雰囲気に、途中で途切れた。


あたしのせいで、空気は最悪。


帰りの車内、会話はほとんどなくて。
家に着いてから、電話をくれた優衣。

「何があったの?」と、心配してくれる声に、「ちょっとケンカしちゃって……」としか、言えなかった。

そして、後から次第に湧いてくる罪悪感。

せっかく幸せ色だった優衣と直大さんの空気を、あたしがぶち壊してしまったんだと思うと、申し訳なくて。

何となく優衣にも会いづらくて、『寝坊しちゃったから、先行ってて』と、嘘をついた。