立ち上がろうとしたあたしを、必死になって止めようとする朝日。

普段大人ぶって、人のことを子ども扱いばかりするくせに、高い所が苦手なんて意外で……少しかわいい。

「冗談だってー。大丈夫でちゅよ、朝日くん」

「は!?」

「ほら、もうすぐで頂上……」

あたしがこんなに優位に立てること、他になくて。
せっかくだからもう少しからかってあげようと、朝日の向こう側、上を見た。


目に入ったのは、ひとつ前のゴンドラ。
多分もうすぐ頂上へ到達する。

そこにいる人のことを、一瞬忘れてしまってて、見えた後ろ姿にハッとする。

「やっ!あっ、えとっ!」

慌てて朝日の視線を、逸らさせようとした。

だけどもう、遅かった。

あたしの声につられて、朝日は後ろを向いてしまって。

しかも、その瞬間。


長い髪をこちらに向けた優衣に、ゆっくりと近付く直大さんの姿――。