こっちを向いて、恋をして。


「聞いてー、優衣! 朝日がね」

近づいて来た彼女に、すかさず泣き付く。
すると優衣は、あたしの頭をポンポンと撫でてくれて。

「石丸くん。もうちょっとひかりに優しくしてあげて」

と、冗談っぽく笑う。

優衣の胸の中から、あたしが勝ち誇ったように微笑むと、

彼はプイッと顔を背けた。


朝日の弱点は……優衣。


「グミ、どうだった?」

「ん、まぁ美味かったけど……」

相手があたしだったら、そんなに素直に答えてくれない。

「これ、岩崎も手伝ったの?」

「ううん。今回はレシピ教えてあげただけ。作ったのは、正真正銘ひかりだよ」

肩を掴まれ、優衣の前に立つように促されたあたしは、『えっへん』と、腰に両手をあて、偉そうなポーズを決める。

だけど、

「ふーん。じゃあ、猿でも出来るくらい簡単なんだろ」

返ってきた言葉に、ガクッとコントみたいに全身の力が抜けた。