こっちを向いて、恋をして。


「うん。でも、怖かった……」

消えてしまいそうな、か細い声で返事する優衣。

直大さんはポンポンと、頭を優しく撫でてあげて。


恋人……の、何だか甘い雰囲気に、恥ずかしいような、くすぐったいような気持ちになって、あたしはパッと顔を逸らした……けど。


あっ、これだ!

次の瞬間、思い浮かんだ。

あたしも『怖かった』って、目を潤ませれば。そうすれば!


「あ、朝日……」

思い立ったら、すぐ決行。

弱々しい声で、早速彼の名を呼んで。優衣とは逆隣に、ゆっくりと目を向けた。


「怖かったよぅ……って、朝日っ!?」


まさか、そんな、思い通りになるとも思っていなかったけど。

目に飛び込んで来た現実は、想像を絶するものだった。


「ちょっ!大丈夫っ!? 朝日っ!」

慌てるあたしの声が、優衣の、直大さんの、周りのみんなの視線を集める。


優衣よりも酷かった。

顔面蒼白。まるで死人のような顔をして、朝日はぐったり前のめりにうなだれていた。