「朝日っ!」
扉を開けると同時に、力いっぱい愛を込めて呼んだ名前。
すると、薄暗くなった教室の隅。
窓際の一番後ろに座っていた男子が、机に突っ伏していた顔をゆっくり上げた。
「……大西」
眠そうな声で呼ばれた名字。
それだけで、あたしの胸はドキンと高鳴る。
「あのね、今日は……」
後ろに回した片手。
近付きながらそれを、彼に見せようとした時、
「おっせーよ!」
彼は、気だるそうにそう言った。
せっかく感じたときめきが、その瞬間に消え失せる。
「しょうがないでしょ!? お菓子作るのって、時間かかるんだから!」
そう言って、彼の目の前にズン!と、透明のナイロン袋を差し出した。
「……何?」
「グミ!」
中には、さっき作ったばかりのグミ。



