言葉とは裏腹に村沢のキスは優しくて……。


言葉よりも確かな思いがひしひしと伝わってくる。


だからーーー


私はそのまま村沢のキスを黙って受け入れた。














漸く唇が離れたとき、私のおでこに顔をくっつけたまま、至近距離で村沢が言う。


「謝らないからな。」


「拒否ること出来ただろ?」


「なのにお前は拒否らなかった。」


「今のが俺の気持ちに対しての返事で良いんだな?」


一方的に。


村沢が真面目な顔をして言う。


私は返事をすることなく、ただ、頭の中でいつもいつも仏頂面なのにこう言うとき、村沢ってこんな艶っぽい顔するんだって


そんな事を考えていた。


ダメだ……。
急にドキドキしてきた。


村沢の切れ長の目から一旦、視線を外すと、


「村沢の気持ち聞いてないから答えられない。」


わざと言ってみた。


「き、気持ちってもう分かってるだろが。それにお前、今、嫌がらなかっただろ?それが答えなんだろ。」


「だって……言ってくれなきゃ……分かんないよ。」


こっちだって引き下がれない。


「はぁ……、分かった。」


村沢は少し離れると咳払いを一つして


「俺はお前がーーー好きだ。これからは俺だけに笑顔を見せろ。」


そう言うと、私が返事をする前にまた唇を重ねてきた。


なんて一方的な告白なんだろう。


私の気持ちなんて最初から無視じゃない。


だけど不思議と嫌じゃない。


寧ろ、さっきからドキドキが止まらない。


三月の終わりでまだ少し肌寒いけれど、急激に私の心は熱くなり始めていた。


公園の桜はまだまだ蕾の段階だけど、きっとあっという間に満開の花が咲くだろう。


ずっと真冬のように凍り付いていた私の心が溶けはじめて行く。


漸く私は花咲き乱れる春の訪れを感じた。