走っていってしまった三枝の背中を見つめたまま、俺はその場を動けないでいた。 ……何やってんだ、俺。 こんなつもりじゃなかった。 本当はもっと柔らかく、事実を包み込んで言うつもりだった。 あいつを、三枝を傷つけないようにただ必死だったのに……。 結局俺は三枝を傷つけた。 俺が、泣かせた……。 ぐしゃっと髪を触る。 わかってた。 あいつが椎木を好きで、 あんなこと言ったらどうなるかなんて。 なのに、止められなかった。