拳を握りしめる。 「アイツ……っ」 「流!」 小声で真剣な顔の類に止められる。 「やめとけって」 「類、離せよ……」 「あんな風に言われてムカつくのはわかるけどさ。今ここで流が出て行ったってなにも解決しないし」 「だからって、」 「それに三枝さんのことかもわからないだろ?」 類の言葉に俺の身体がピタリと止まった。 ―――そうだよな。 三枝の名前は出てないし、違う女のことなのかもしれないのに。