舞台の袖にいるスタッフたちも、その光景を凝視する。


握手に夢中になっているファンや、君塚、勝哉、柿谷は、気づいてはいない。


このまま、握手会続けてなんていられねぇ


マナカを危険な状態になんて晒したくねぇ


隣にいる君塚の耳元に、緊急で抜ける、と一言残し、舞台袖奥に向かった。


一瞬、ザワついたが、勝哉が機転を利かし、うまくその状況を収めてくれた。




舞台袖奥…


マナカの後ろにいるのは、若い、女子高生くらい?の女。

マナカの両手を片手でつかみ、もう片方の手には光る刃物がマナカの首筋にあてられている…。


まだ、インカムを付けていたのが幸いし、三ツ井さんが今の状況に至るまでを
説明してくれる声が耳に入る。


犯人…ナイフを持っている以上、この女をそう呼ぶしかない。


この女、以前、駅でマナカを傷つけた女だった。


マナカが罪に問わない、と寛大な心で許したにも関わらず、またこんな形でマナカを傷つけようとしている。


さすがに、二度はない…。


すでに三ツ井さんが警察に連絡をして、到着を待つばかりだと言ってくれた。

それまで、時間稼ぎだ。


「なぁ? アンタ、何が望み? オレのマナカ、なんで傷つけんの?」


怒らないよう、気をつけながら女に言う。


「彼女…潤が好きで好きでしょうがないんだって…」


ナイフを突きつけられているにも関わらず、マナカが悲しそうに言う。


「潤と一緒にいる私が憎いんだって…」


オレの目をじっと見るマナカ…