「潤、もう一回」

ガラスの向こうから監督の声が
頭上から降ってくる
これで、何テイク目だ?
一緒のカットでアフレコする君塚のため息がすぐ傍で聞こえる

もう一度、監督の要望のようにしてみるが、OKの声は聞こえてこない

すると
監督の後ろにいた三ツ井さんの方を向き、なにか二人で話してる
話し終わったと思ったら


「はい、30分の休憩にはいりまーす」

助監督の声が聞こえた


簡易スクリーンに映されていた映像は消え、電気も落とされた


台本を閉じた君塚が先にブースを出て行く


オレも気分を変えようと、君塚の後に出て、そして録音スタジオも出た


地下の階段を上がり、外の空気でも吸おうかと、エントランスへ向かうと…


「おい…潤」


…?いま、オレ、呼ばれたよな?
立ち止まり、振り返ると、君塚が立っていた


へ?…君塚が、名前、呼んだのか?…


「潤、ちょっと顔貸せ」


やっぱそうか…
なんだなんだ、さっきのクレームか…?


君塚の後に続いて行くと、共同ルームに入って行った