合宿所に戻り、事務室に入れば社長と三ツ井さんがオレの傍に駆け寄ってきた


「潤、マナカちゃん大丈夫だったか?」


「社長…」


何から話せばいいのか…どこから話せばいいのか戸惑い口を閉じてしまった


「ど、どうした? 潤?」


「おいおい、いつものお前らしくないぞ…」


社長と三ツ井さんが、オレを見て困惑してる…


「あ、ちょっと整理させてもらえますか…」


ソファーに座り、深く息を吐き落ち着かせる


テーブルを挟んで、社長と三ツ井さんが腰を降ろしオレの言葉を待っている


「…マナカの体調は、大丈夫です。お腹の子も…」


「そうか、良かった 安心したぞ」


「ただ…」


「え? なんだ? なにかあるのか?」


不思議そうな顔をオレに向ける社長と三ツ井さん…


「記憶が…ここ最近の記憶が欠落してしまったようなんです」


「「え…?!」」


社長と三ツ井さんがお互い顔を合わせる


「て…ことは、潤のこと…覚えてない…のか?」


「はい…オレも、社長も三ツ井さんのことも…」


こんなことは初めてだった…
仕事でものすごく嫌なことがあっても、意に沿わない仕事や反りの合わない相手に
どんなにツラい思いをしても自分がこの業界で残るためだと我慢出来た

だが、さすがに今回の、マナカのことに対しては堪えてしまった

オレは、マナカのことを愛してるし、
愛してるだけにショックが大きく、心に穴が空いてしまった

そして
知らぬ間に涙が一筋流れていた


社長も三ツ井さんも、そんなオレに気を使って部屋を出て行った