廊下の長椅子で、マサコと座り無言で待つ
マサコも落ち着かないのだろう
さっき外に出て、コンビニに寄って買ってきたと思われる新聞を、開いてはいるが、逆さまだ…


しばらくして、ドアが開き先生が出てきた


「先生、どうなんですか?」


椅子から立ち上がり先生に聞く


「はい、そうですね、一時的な記憶障害かと思われますね。 
特に最近の記憶が欠落してるようです。」


「最近の…記憶ですか…、それはいつ記憶が戻るか…もわからないんですよね…?」


「そうですね、なにかのきっかけで思い出す人は多いですが、いつ、というのは、私たちにも…」


「そうですか…」


「落ち着いたら詳しい検査しましょう では、なにかありましたらいつでも仰って下さい」


去っていく先生に軽くお辞儀をし、中へ入ると看護師さんがマナカに何か話をしていた


オレたちが入ると看護師さんに呼ばれた


「ちょうど良かったわ、杉山さん あなたのご主人さんとお知り合いの方よ」


看護師さんが、マナカの傍にオレたちを促した


「主…人…です…か?」


枕を背にし上半身を起こしていたマナカは、オレとマサコを見て不思議そうな顔を向ける



「そうね、今はわからないわよね… 徐々に思い出していけるといいわね。

あ、ご主人さん、少しいいですか?」


看護師さんに、マナカの家族か、あるいは友達に連絡をしてほしいと言われた
今のマナカは、頭の中が混乱している可能性があるため、
マナカが覚えている人物の顔をみれば心も落ち着くのでは、という考えだった



意味はよくわかる…

マナカの中に、オレが存在していない…

さすがに、オレだって凹みそうだ…