誰もが朱雀と目を合わせないよう、顔をそむけている。


……な、何、この人……。



「朱雀はこの辺じゃ、“炎帝”っていう通り名がついてる。中等部の時からケンカで負けた事がないんだ。そして、俺も“蒼帝”って呼ばれてる」



炎帝に蒼帝……。


さっき誰かが言っていた名前だ。


ニコッと笑いながら龍斗は言うけれど、よくよく考えたらすごく怖い話だと思う。


ケンカで負けた事がない?


だけど、今みたいにケンカを吹っ掛けてくるガラの悪い男がいるって事は、敵も多いって事でしょう?!



「……それと、この女に手を出したら容赦なくつぶすからな」



朱雀が突然、私の腕をつかんで自分の方へ引き寄せると、クラス中に宣言をした。


彼の表情はゾッとするほど冷たくて怖い。