龍斗は笑っているけれど、多分、心の底から笑っていない。
たとえるなら、笑った顔のお面をつけているような、そんな感じ。
多分……ううん、絶対に龍斗は美香さんの事を……。
「さて、帰って夕飯の支度をしなくっちゃ。響ちゃん、機会があったら遊びに来てね」
「あ、はい……」
ヒラヒラと手を振って、改札を通過する美香さん。
遠くを見るような目で、その美香さんを見送る龍斗。
「龍斗……」
「あー、ボーっとしちまった」
私の声で我に返ったのか、アハハとごまかすように笑う。
「マジ、ダセー。バレたなら仕方ないな。……そうだよ、俺の恋の相手」
願っても叶う事のない、恋。



