お姉さんなら、別にそんなに表情をこわばらせなくったっていいのに。
それとも、お姉さんに見つかったらヤバい事情でも?
「美香さんは、俺の兄貴の嫁さん」
「……えっ?」
そう補足した龍斗の声は、どこか震えていた。
確かに、美香さんの左手の薬指には結婚指輪が光っている。
……龍斗、もしかして……?
「お嫁さんって言っても、まだまだ新米なのよ」
「兄貴とは高校の時からの付き合いで、大学卒業して結婚したんだ。んで、ずっと俺の家庭教師をやってくれてた」
「あんまり効果なかったかなぁ?龍ちゃん、元々頭良かったみたいだし」
二人のやり取りを見て、チクチクと胸が痛む。



