「じゃあ、帰るか」
「悪いな、龍斗。んじゃ、響、夜電話するから」
「あ、うん」
朱雀は片手をあげると、理事長室の方へと行ってしまった。
「夜電話するから……か。仲よくてうらやましいぜ」
そう言いながら、龍斗は靴にはきかえる。
私は顔が熱くなったのを感じて、小さくため息をついた。
「だから、そう思うのなら、好きな人……」
言い終わらないうちにハッとして、口をおさえた。
朱雀に言われたばっかりだったのにっ!
「まあ、そう簡単にはいかない問題があるんだよ」
龍斗は静かに笑ってそう言った。
その笑顔はとても悲しいものだった……。



