でも、一瞬で空気が変わったのが鈍い私でもわかった。
龍斗の顔から笑顔が消えるし、朱雀は聞こえなかったかのように窓の方を向く。
踏み込んじゃいけないエリアだったっぽい……。
元の空気に戻そうと、何か話題がないか考えようとしたけれど、思いつかなかった。
すると突然、ガタッと音をたてて龍斗が立ち上がる。
その音にビクッとして、おそるおそる私は彼を見上げた。
「トイレ行ってくる」
ニコリともせずに、龍斗はそう告げて教室を出て行った。
「……響、今のはまずいだろ」
「まずいって……聞いちゃいけない事だったの?」
「とにかく、後でオレが言っておくから。響は何も言わなくていい」
朱雀はそう言って、長いため息をついた。



