「なんだよ、忘れんなよ。お前が助けた妊婦のお姉さん。あー、今は元妊婦か」
「ああっ!」
朱雀に言われて思い出した。
受験の時に、私の前を歩いていてその場に崩れ落ちたお姉さん!
……でも、私が助けたわけじゃなくて、ほとんど朱雀が助けたようなもんだし。
あの時は、私もどうしていいかわからなくてただ、オロオロするばかりだったしね。
「めちゃくちゃあの家族に感謝されてさー。今日、旦那さんもお休みみたいだからぜひ来てくれって。響にお礼が言いたいんだってさ」
「お礼だなんて、そんな……。私はただそばにいる事しかできなかったのに」



