その光景をボーっと見ていたら、彼は怒った顔で私をにらんだ。
「お前もさっさと助手席に乗れよ!」
「……えっ?!」
「早く!」
彼にうながされて、私は助手席に乗る。
タクシーの運転手は、険しい表情をしながら車を発進させた。
「もうすぐですから!頑張ってくださいね!」
「うっ……うっ……」
「頑張れよーっ!」
お姉さんのうめき声が聞こえるたびに、私の心臓が跳ね上がる。
彼だけでなく、タクシーの運転手までもがお姉さんに声をかけた。
産婦人科には10分も走らないうちに到着した。
タクシーの運転手さんも降りて、さっきの彼と両脇を抱えるようにしてお姉さんを産婦人科の中へと連れて行った。



