途中で振り返ってみたけれど、朱雀がついてくる様子はなかった。
……あー、腹が立つ。
こっちがしんみりしているっていうのに、優しさと共に口説いてくるとかふざけんな。
いや、あれは口説いてきたわけじゃないんだ。
人の反応を楽しんじゃって……。
「ムカつくムカつくーっ!」
薄暗くなった誰もいない住宅街。
私は周りの目を気にすることなく、思いっきり叫んだ。
「……あれ?」
でも不思議と、さっきまであった悲しみがどこにもない。
まるでこの世の終わり……っていうくらい涙でグシャグシャになっていたはずなのに。



