「………。ブルー、かわいかったね。」
突然、みっちゃんが…
そんなことを言ってきた。
「……うん。」
「ねえ、紗羽。あの時さー……。」
「……ん?」
「………。いや、やっぱ何でもない。」
「………?」
みっちゃんはずっと、何か言いたげなカオしてるのに…聞いて来ない。
それは…、そう、早瀬の家に行ったあの日からかと…思ってはいるんだけど。
私もまた…、詮索はしない。
自分にボロが出るのが…怖かったから。
「美那子ー、ちょとこっち来てー!」
しんちゃんに呼ばれたみっちゃんは。
「……ごめん、行ってくるね。」
少し…顔を赤くして。
しんちゃんの元へと…走っていった。
「………。……いいなあ……。」
彼女の恋は…実って。
柔らかい笑顔で談笑する二人に……
ほっこりと、癒される。
「紗羽ー、私、次の授業とってないから…先に帰るね!」
やがて…、みっちゃんは。
幸せそうな表情を浮かべながら…、教室を出て行った。
私は、それを見送って、
それから、また……
窓の外へと、視線を移すと……。
「……………。………アッチも。…常夏か…。」
いつの間にかボールを追うのを辞めた君が、タオルを片手に…
サッカー部のマネージャーと…
話し込んでいた。
早瀬と。
早瀬の…彼女。
半月…にもならないくらいだった。
君と肩を並べて、アイスを食べた日は…。
「………………。」
まるで、あれは…夢だったみたい。
現実は。
何でこうも…違うのか…?
君は……私の方を見ない。
多分、気づいてなど…いない。
いつも背中ばかりを向けて、ただただ、力強い後ろ姿ばかりを見せつけて…。
惹き付けては、離さない。
君が笑顔を向ける相手は…、
いつみたって、綺麗な…彼女。
その証拠に。
彼女が幸せそうに微笑む顔だけは…ここから、よく見えた。


