「…ま、いーや。コンビニ行くふりして送りたいってだけ。…ダメ?」
早瀬の目は真っ直ぐで……。
彼が溺愛する、ブルーとよく似ている。
ブルーは飼い主に似ているのかな。
いとも簡単に……
人の懐へと飛びこんでくる。
気負うことなく、
自然に……。
「じゃあ、紗羽ちゃん後ろに乗って。俺漕ぐから。」
「……うん。」
「とばすよ?」
「え。何でっ。」
「……暑いから。下り坂はきっと…風が気持ちいーよ。」
早瀬は躊躇なく私の手をとって。
自分の肩へと…運ぶ。
「…怖くなったら、抱き着いてもいいからね。」
「…しないよ、そんなこと!」
「…どーだかね。」
振り返った早瀬の顔は、
悪戯っ子みたいな…笑顔。
自転車はぐんぐん加速して……、
風をビュンビュン切って、走っていく。
肩を必死に掴んで……
通る道順なんて見る暇さえ与えられず、
「………き……、きゃああ~!!」
下り坂。
しないと宣言していたはずが、私はしっかりと早瀬に抱き着いていて。
このスリルと、男の人の固い身体に……
ドキドキする胸の鼓動が伝わらなければいいと、
本気で祈った。
「……早瀬…、コンビニ…!」
「………ん~?」
「思い切り通り過ぎてる!」
「……うん。俺食いたいアイス、そこにはないからいーの。」
「…………。」
「また下るよ~!掴まれっ。」
「え、あ………、ハイ……。」


