変わったことと言えば。
年齢を重ねた分だけ……、冷静に物事を考えるようになったこと。
おそらく、それくらい。
職員室を去った俺が…、まず最初に向かったのは。
用がない限り、下手したら二度と足を踏み入れることはないであろう……、調理室。
待っていたのは、調理部の面々と……。
顧問の先生。
珍しい客に、皆、不思議そうに……こっちを見ていた。
「すみません、お気になさらず。ちょっと探しモノです。」
なんて…、言ってみるけど。
どう考えても、胡散臭過ぎた。
好奇な目でみられつつも――。
迷うことなく、食器棚の硝子戸を…開けた。
あの女子生徒が言ってた通りに。
ソレは――…
奥に置かれた大皿の間から……出てきた。
ご丁寧にも、やはり「映志先生へ」と―…宛名が書かれていて。
きっと、40枚あろうが…それらは。
いつかはちゃんと…手元に届くのであろう、と。
俺らにはなかったちょっとした気遣いが…
嬉しかった。
写真に写っているのは、
一人の女子生徒と、当時彼女と付き合っていたクラスの男子生徒との…ツーショット。
『写真は全部揃いましたか?』
「やっぱコイツが黒幕かー。アホだな、ホント。」
きっと、学校の至る所で……
奴らの青春の軌跡が…、ひっそりと俺を待ちわびているのだろうけど。
それら全てを、手に入れるにはどれだけ時間がかかって、骨が折れるほどに大変なことかっては…解っていた。
自分が発信したイタズラが、案外手強いことは…
矢代先生が証明している。
だから――…、
肩の力を抜いて。
その、タイミングを…待つことも大切なのかもしれない。
そうだよな、矢代先生――…。


