その日の夜……



私達は、運動会の打ち上げを名目に…
早瀬家へと、訪れていた。



日焼けして…真っ赤になった腕を見せあいっこした。
紗羽と早瀬くんは、すでに…真っ黒。一人だけ真っ白なしんちゃんに…笑ったり。ちょっとしたことでも、何でこんなに笑えるんだろう?って…思うくらいに…大いに笑った。

勇生くんと、私の娘も…キャッキャと声を上げて。まだ細ーい腕を見せあっていた。






中でも、親子競技の話に及ぶと。紗羽の笑いのツボが…爆発!


変身競争に出場した、芳賀親子。


トップをぶっちぎりで走って行くと…


途中、勇生くんに魔法を掛けられて。

衣装を着たか、と思うと。

すぽんっと髪の毛を取ったもんだから……


司会を努めていた先生も、ビックリ!


「勇生くんのお父さんが…一休さんになりましたー!」

って、今の子供にはわからないであろうアナウンスを入れるから、それがますます…可笑しかった。

保護者席からも、年長さんからも、笑いの声が…上がっていた。

今にして思えば、早朝からズラを被っていたんだなあ…、と。

その、したたかさには…一本とられた。



普段滅多に園に顔を出さない恒生さんだからこそできた…荒業だ。





紗羽は、話にちょいちょい首を突っ込んでくるものの、つまみの準備をしたり…、キッチンとリビングを行ったり来たり。

「紗羽、手伝おうか~?」

私が、そう声を掛けるのと…ほぼ同時に。


早瀬くんは、皿を持ってきた彼女の手首を掴んで、ストンとソファーに座らせた。



「ハイハイ、ありがと。少しくらい、おとなしくしてろよー?」
……なんておどけてみせた。


代わりに…、今度は早瀬くんがキッチンに。



その間に、恒生さんとしんちゃんは…みんなのグラスにビールを注いで。


「かんぱーい!」と、声高らかに、グラスを合わせた。




……ん?


酒豪のサワが……


ビールを飲んで…いない?



傍観者の…血が騒ぐ。



皆が話に夢中になる中、早瀬くんは、戻って来たかと思うと…。


紗羽が持っているグラスと、自分が持っているグラスとを…さりげなく、交換した。



「……………。……紗羽、全然進んでないね。私…飲んであげよっか?」


「あ。」と、早瀬くんが言うのが早いか……、私は、紗羽の手からそれを抜き取って。

ぐびーっと、大きく一口…


飲んでみる。




それは、泡こそは立派なれど。

お味は、甘い……りんご味。