「あ、ウチらも行ったけど…サワはピアス空けたばかりでできなかったよね。」
「ああ、あったね、そんなことも……。」
アッサリ教室に帰されたのは……
私と、それから…しんちゃんだった。
「……。紗羽ちゃんとピアスの穴あけっこしたもんなあ、そういや。」
しんちゃんが…、私の耳元を指差す。
私の耳には…、
本日、小さな石が嵌め込まれたピアスがついている。
「……うん。今日これ、久々につけた。案外大人になるとしなくなるもんだねー、あの頃はめっちゃしてたのに。」
「わかるわかる!でも…塞がってないんだ?」
「うん。年1ペースでも大丈夫みたい。」
「ふぅ~ん、俺もしてみよっと。」
「今したら……ちょっとチャラく見えるかもよ?」
「…………。……だよな。」
私としんちゃんが盛り上がっていると……。
恒生さんが、いよいよ咳払いをする。
「…脱線してますよ。話、続けていい?」
「「…ごめん。どーぞ。」」
仕切り直し……。
「……で、だいぶ時間が経って……、進藤が教室にフラフラと戻って来たんだよ、フラフラと……。」
「「「……………。」」」
「初め誰もそんなことに気づかなくてさ、後から教室に戻って来た早瀬が、『進藤、大丈夫かー?!』って入口で叫んで。…それで、皆が進藤に注目したら……顔がもう真っ青で!早瀬がそのまま奴を掻っ攫って保健室に連れてったって話。『お前が献血してもらえ』って、思わずしんちゃんぼやいてさ。大笑いしたじゃん?」
「「「あ~……!」」」
そこでようやく……
しんちゃんとみっちゃんは、思い出したかのように…、声を上げた。
私は……、
あれ……?思い出せない。
余り目立つタイプではなかった進藤くんの…
強烈なエピソード。
こんな印象深いこと、覚えていないなんて…?
「………ちょい待て。それ、進藤っつーより、早瀬の武勇伝じゃね?」
しんちゃんは眉を垂らして笑いながらも…
冷静に言い放った。
「………だな。結局のところ、早瀬は授業サボって…、おまけに倒れそうな進藤を助けて…。あいつ、お礼に進藤からジュース貰ってたもんな。なんちゅー要領の良さ!」


