『あー…、――…あー。マイクのテスト中ー』
途端に。
響いてくる…早瀬くんの声。
『紗羽センセー聞こえますかー?』
私たちは、ふと…グラウンドへと目を向けて。
二人の姿を……見守る。
「聞こえませーん!!」
『聞こえてんじゃねーか。』
幼稚園の先生方の笑い声が。
グラウンドいっぱいに……広がった。
「みっちゃんは、旦那さんにこーいう風に絡んで欲しい?」
恒生さんは、ふっと笑って…。
私に尋ねてきた。
「……ううん。想像出来ない。」
「……そ。あの二人だから…。あり得るってだけ。」
「……………。」
『そこの、井戸端会議中の…二人!』
「「…………!!」」
『勇生くんのおとーさん、未來ちゃんのおかーさん、聞こえますかー?』
「「……………。」」
どうやら。
見ていることに…気づかれていたらしい。
「「聞こえませーん!!」」
大きく息を吸って――…
二人に届くように、と…応えた。
すると。
「校舎ん中まで聞こえてんぞー!!うるせーなー!!」
頭上から……
怒鳴り声。
見上げれば、窓が開かれた…教室から。
矢代先生が……顔を出してるではないか!
『……………。』
一方の…早瀬くんは。
片手でマイクを持って。
それから…、もう一方の手で、日差しを遮りながら。
校舎を…見上げていた。
そんな、彼の姿を――…
私は、見たことがあった。
……そうだね、客観的に見ていた方が。
その人が――…
よく、見えてくる。


