「クラス名簿見つけたから…持って来たよ。」
私はバッグからそれを取ろうとして。
ピタリと…
その手を止めた。
「ねえ…、ウチのクラスの人数覚えてる?」
3人共、首を傾げつつも……
みっちゃんが答える。
「30人くらい?」
「ん、大体アタリ!」
「女子が二人多かったよね。」
「そうそう…、女子が17で男子が15。合計32人。全員の名前…、言える?」
私の意地悪な質問に……、
答えたのは…やはり、みっちゃん。
「……席順で覚えてるから…言えるかも!」
「え、席順?」
「入学してすぐって…、名簿順だったじゃない?それ、覚えてるんだ。」
私達は……
3年間、同じクラス。
他の普通科のクラスが7組あるのに対し…、
特進科は1クラスだけ。
クラス替えの仕様もなく……、
ずっと、『8組』を名乗ってきた。
だから、どのクラスよりも…結束は固かったかと言うと……
……そうでもない。
派手目な女子グループに……
真面目過ぎる男子グループ。
ウチらのように、どこにも属さないようなのほほんとした輩もいれば……
ちょっと、マニアックな人もいて。
烏合の衆…だった。
アクの強いクラスだったから、担任の矢代先生は苦労の連続だっただろう。
みっちゃんが呼び上げる名前と、名簿を照らし合わせながら……
あの、狭い教室の中を…
思い浮かべていた。
まるで……
出欠とりをしている気分だ。
「進藤…、ええと…進藤……下の名前なんだっけ?」
みっちゃんはとうとう躓いて…、ふと、私の顔を見た。
「『強』。進藤強くん。」
「うわ、懐かしいなあ、進藤!俺、あいつの武勇伝忘れらんない。」
恒生さんが、含み笑いしながら…
目を上に向けて、回想し始めた。
「高2ん時だったと思うけど…、学校に献血カーが来てさ。献血すると、授業サボれるし、ジュースも貰えて…、おまけに善いことしたっていう称号みたいなのを期待してたのか……アイツ、まきまきと教室出て行ったんだよな。」


