「………し……、しんちゃん…?!」
「よー、紗羽ちゃん♪」
夢の国にいたお姫様は。
どうやら……魔法が解けてしまったらしい。
さっきまでの凜とした姿は…一瞬にして消え去り、そこにいるのは…、いつもの…
お惚け紗羽ちゃん。
「いつからそこに…!」
「え。二人が退場してくる前から♪」
「うっそ、じゃあ…今の…。」
「ごっつあんです!」
俺は、ソファーから飛び降りて。
二人のそばへと…歩み寄る。
「………………………。は…、早瀬っ、何で黙ってんの?」
「え。だって…、匂ってたし?しんちゃんがエンディングで絡んでる辺りからして、まだなにかありかなー、と。」
「じゃあ何でキスするのよ?」
「気づいたからにきまってんじゃん?マーキングしとこっかなあって。」
マジで?
あれ、見られてることに気づいて…してたんか。
…………腹黒っ…!
俳優になれるわ……。
「紗羽ちゃん、コイツはこーゆー奴だ。今ならまだ間に合うぞー?俺を選んでおきゃあ良かったのに。」
口からポロっと出た言葉は。
今まで俺が、どんなに言いたくても…言えなかった言葉だった。
それが、何故…今、こんなにも簡単に………。
なのに…、だ。
ヤツは紗羽ちゃんを背後から羽交い締めすると……。
「…………。………悪いけど。紗羽は、俺のもん。誰にも…、いや、お前にとられたくないから、結婚したの!」
そう、ハッキリと…言ってのけた。
「…………。なーんて、……やっと言ってやった!」
「……………………。………は?」
「遠回しには言ってきたつもりだったけど…、選ぶのは紗羽ちゃんだったからな。俺んとこに来なかったら…一生言えない台詞だったよ。」
「………………。」
何だよ……、それ。
今更……
カミングアウトかよ!


