ヤツの母親が語った言葉は。
後から…ズシン、と。胸に響いてきた。
ライバルだなんて、豪語したけれど…。今の俺には、荷が重い。
だって、それに見合うことを…俺はしてきたか?
いつも、中途半端にして…ごまかして来やしなかったか?
結果が…見えていたから。
負けるのが…分かっていたから。
「……ちょっと…、席外すわ。」
「え。しんちゃん、どこに…」
突然立ち上がった俺に…
恒生が、心配そうな顔を向ける。
「………。オブラートに包んだのに聞くか!便所だよ、便所っ。」
「……そう。いってらっしゃい。」
ここは…極楽浄土かってな笑顔で。
奴は、手をひらつかせた。
会場の扉を開くと、
「……ん?」
そこには…
沢山の小さな子供たちが、整列して座っていた。
同じ園服(制服?)に身を包み、無邪気に…わいわいと騒いでいる。
「みんなー、シーっ…。紗羽先生に見つかっちゃうよー?」
数人の、先生と思われる人物が、子供達を静かにさせるのに…悪戦苦闘。
………可愛い。
園児が?
イヤ、それはもちろん…、この、先生達が。
男の憧れる女性の職業ナンバーワン!
って、俺の中の鉄則は……。
若かりし頃から、覆えされることはない。
中に、見覚えのある顔を見つけて…、声を掛けに行った。
「もしかして、余興…ですか?」
「……!ああ…、どうも、その節は…。そうなんですよー。今、出番待ちで…。」
「…へえー…。紗羽ちゃん、泣いて喜びそう。」
「私もそう思います。」
その先生は、幼児に見せる笑顔そのままに…
俺に 、天使の微笑みを…向けてくれた。
「………。……癒されるッスね。」
「……え?」
「……いいお仕事です。うん。……紗羽ちゃんに…ピッタリだなあ…って。」
アイツはそれを…。
当時から…見抜いていたのか。
それとも、ヤツの言葉に、彼女の方が感化されたのか……。
どっちにしたって、偶然にしたら…出来すぎじゃないか?
「………すみません、写真撮らせてもらってもいいですか?あ、言っとくけど、悪用はしません!彼女に…見せたいんです、子供達の笑顔。」
「……分かりました。紗羽先生の友人ですから、そんな疑ったり…しないですよ?」
「………。……ははっ、ありがとーございます。」
彼女の信用度は…、絶大だ。


