プロの司会者の巧みな話術は…見事なまでで。
予定外のことでも、まるで…式次第通りってな具合に…
滞りなく、進行は進められて。
指輪の交換…。
それから、俺が最も見たくなかった…誓いのキスへとやって来た。
「ちょっと、ちゃんと撮ってよ?!」
撮りたくもないのに、いいカメラを持参したのが…仇となった。
理央さんに目をつけられ…、
その、タイミングを逃すことさえ…許されなくなってしまった。
ヤツは…、片方の手で、彼女の肩を掴むと…。
もう一方の手で…前髪をそっと…分けた。
露になったそこへ…顔が近づいて、
もう少しで…触れそうになったとき。
シャッターを抑える俺の指が…
一瞬だけ、ためらう。
「………え……?」
意表つかれたのは……
きっと、彼女も同じであっただろう。
ヤツがキスを落としたのは…
おでこなんかじゃなくて。
ちゃっかり…唇にしていたのだから。
その、証拠に……
ワンテンポ遅れてシャッターを押したこのカメラに。
目を見開いて…
驚いた顔した彼女が…写っていたのだから。
いちいち度肝を抜くのが…ヤツの趣味なのだろうか?
それでも、彼女を…
あんなに幸せそうな顔にさせてしまうのは。
アイツにしかできないこと……なのかもしれない。


