「待ってよ、最後まで誓わせて。」
途端に、奴が発した…言葉に。
イタズラっぽく…客を見据える姿に。
今度は、横にいる彼女が…
クスクスと笑いだした。
どうやら、緊張の糸が切れてしまったようだ。
「コラ、そこ!笑うなっ。」
「……だって……。」
「……集中!」
「……ぷくく……、は、はい。ごめんなさい。」
「……ヨシ。オッケー。喧嘩しても仲直りっ。」
息の合った…夫婦漫才が暫し続いて。
それから、両者…互いに向き合う。
「……妻の…、紗羽っ。」
「……えっ?」
予定外の…言葉なのか。
彼女は驚いたかのように…顔を上げて、ポカンと…している。
「……貴方は、生涯俺の側で、その、惚けた愛情を…絶えず注いでくれることを誓いますか?」
「………………。」
ああっ、紗羽ちゃん…返事返事っ!
「……誓いますよネ?」
「……は、はい。」
「……んじゃー、次は紗羽ちゃんどーぞ。」
「……!………えー…と……。」
この茶番は…何なんだって、
頭に来るのも……嘘じゃない。
だけど、二人から…目が離せないのは、
何で…?
「……夫の…、早瀬っ。」
「待て、そこは名前で呼ぼーか。」
「………映志?」
「……はい。」
「貴方は、今のような…妻のピンチの時も、これからも起こるであろう困難の時も。生涯…、側にいて、フォローしてくれることを…誓いますか?」
「………。……あったり前です。」
ヤツは…満足そうに微笑んで。それから…前に向きなおすと。
今度は、俺ら招待客に向かって…話し出した。
「今、私達はここに…、永遠の愛を誓いました。私達は…沢山の方に支えられ、背中を押され、ようやく…ここまで辿り着くことが出来ました。友達や…、恩師の先生。それから…ライバルであったり…」
「……………。」
ヤツの視線が……
一瞬だけ。
俺の視線と…ぶつかった。
「……その、恩を忘れず、それから…本日ご列席の皆様に今後恥じることのないよう、誰よりも幸せな家庭を…築いて参りたいと思います。これからも…叱咤激励を受けながら愛を育んでいく所存です。ずっと見守って頂けたら…幸いです。……以上!平成〇〇年、7月〇日 新郎 、早瀬映志、」
「……新婦、紗羽。」
大きな…拍手の渦が。
会場を…支配していた。
突っ込みどころ満載のはずなのに…付け入る隙を与えない。
独特であって、人を魅了する…
そんな……
誓いだった。


