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遠い…夏の日。
太陽の光が、俺らの頭上と…、
それから、土を蹴る足元へと、
容赦なく…熱をもたらす、そんな日々を…。
ただ、無我夢中に。
ボールだけを追って、
ひたすら…駆け回る。
そうしていれば、気づかないフリが……
できるから。
決して…後ろへは、振り向かない。
振り返れば、きっと…
その視線に、囚われたく…なるから。
「お疲れ様ー。」
マネージャーが、選手たちに…タオルを持ってきて。
コーチからの指導を仰ぎながら…汗を拭く。
2、3ポジション取りの確認をして。
それぞれに…休憩に入ったその時に。
「最近、調子いいんじゃない?」
スポーツドリンクを手にした、マネージャーが……
俺に、それを差し出してきた。
「……うーん…、そっかー?」
全く…自覚がなかった。
「……『彼女』が見てるからー?」
「……。彼女じゃないし。」
「ふーん。あ、もしかして…私に遠慮してる?」
「……は?何でだよ。…つーか、そうゆーんじゃない。」
「手でも振ったらどう?」
「………ダメ。集中欠ける。」
校舎に…背を向けて。
俺は、はー…っ、と溜め息ついた。
「………。ひど…、私と付き合ってる時は全然そんなこと…なかったのに。」
「…………。」
「でもさー、映志。彼女はホントに…映志を見てるのかな。」
「……え?」
「ホラ、いつも一緒に…いるじゃない。他の男と。その人…だよね。」
「…………。」
いつも…一緒に?
思わず…
後ろへと振り返って。
校舎を…見上げる。
………と、
「「………あ。」」
俺が呟くのと…、ほぼ同時に。
彼女の口元が…僅かに動いた。
おまけに、
なんだ……?
絶対目が合ったって…確信があるのに。
彼女はまるで…気づかなかったかのようにして。
ゆっくりと…視線をズラしていく。
手にもっているのは…、彼女の好きな、あんパンか?口がリスみたいに…膨れていた。
何アレ…。
すげー可愛いし。
「……真奈美。」
俺はまた、ぐるんと正面に向きなおして。
マネージャーを…睨む。
「どこが…男と一緒だって?」
しんちゃんはおろか、恒生だって…いないじゃないか。
「アハハっ、単純~!バカめ。私を簡単に振った罰だ。」
「てめ…。図ったな…。」
タオルをブンブンと振って…、
真奈美へと、仕返しする。
彼女はキャーっと声を上げて、その場を…跳ねるように逃げまどった。
少しだけ息を弾ませ、とうとう…タオルの端を捕まえると。
「素直に認めないからだよー?……あ、ホラ。また見てるよ?」
ニヤニヤしながら…、また、そんな事をいってのける。
でも、その言葉が…
嘘ではないって…、俺は、わかってるんだ。
だから。
今度は…そっと。
体は…横向きに
目線だけを…移して。
その、事実を…
確かめる。


