目に前に翳されたのは…
一枚の…紙。
「………。…エロ本…」
「……じゃ、ねーし!」
「………だよねえ。」
「てか、現実みよーか、紗羽ちゃん?」
バンっと音を立てて。
テーブルに置かれたその紙は……。
「……俺のちっちゃな夢。紗羽ちゃんが…叶えてくれるんじゃねーの?」
君の夢が詰まった…
誓約書。
「これにサインをしておけば、一生の幸せが…約束される。もれなく、俺っていうオマケもついて来るけど…これがまた、便利!笑いに溢れた人生が…貴方を待っていることでしょう。」
「…………。」
「まあ、言ってもただの紙切れ一枚ですからね、胡散臭いかもしれないけど…今なら…、タダ!」
「………………。」
「お買い得だと…思わない?」
「……………………。……もし、買わなければ?」
「そーだな…、貴方が、いつか貴方の恩師に言われたように…。『獲物が逃げる』かも…しれませんね。逃した魚はデカかったと…後悔するのが目に見えます。」
ああ…、そうだ。
いつか…矢代先生に、そんなことを…言われた。
私は、
何度も過去を振り返って、
あの時は、こうだった、と…懐かしむばかりで。
だけど、それでは…
変わらないんだ。
18才の自分と、背比べして…どうするのよ…?
先に…進まないと。
君の背中を、もう見なくていいように…、
真っ正面から。
……向き合おう。
「………。買います。契約書にサインをしますので…、すみませんが、ペンを貸していただけませんでしょうか。」


