ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。












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サウナのように…暑い教室。

うちわでパタパタと顔を扇ぎながら…、気だるそうに窓際に向かった彼女が。



一瞬にして…声色を変えた。





「……。癒されるね…、アハハ、手振ってるし!ばいばーい♪」





暑さや気だるさは…何処にいったのか。




一気に顔をキラキラとさせて…手を振るその様子に、うっかりこっちの方が…癒されてしまう。



窓の外からは、子供たちの賑やかな声が…響いていた。






「うおっ、あの保育士さんめっちゃカワイイ!」




途端に、現実に引き戻したのは…『しんちゃん』の声。



「たまんないよね、あの笑顔。天使か!」


「……。しんちゃん、オッサンくさいよ?」


「馬鹿言え!保育士、看護師、スッチーと来たら、男が食いつく職業なんだよ、なあ、早瀬?」





イキナリ話振られても…、聞いてないかもしれないのに。


いや…、実際は聞いてたけど、


試されてるみたいで…少しイラッとした。




「……うん。コドモは可愛いし、好き。息子がいーな。キャッチボールできるし。」



的外れな回答。


だけど…、これは、ヤツに対する…挑戦状だ。








「………。お前…、話聞いてなかっただろ。しかも、サッカー部としてのプライドはないんか?キャッチボールって。」


「聞いてたっつーの。いいじゃん、俺のささやかな夢なんだし。」


「………。だから、今、理想の女性像の話を…」


「うん、だから…奥さんは子供好きで一緒にキャッチボールしちゃうような人がいい。べつに職業は関係ないけど…保育士だったら、間違いなさそーじゃん?」






チラッと…


彼女の方を見る。



さて。彼女は…どうとるだろう?






「紗羽ちゃん、似合いそうだよね、保育士!」


「……。……エッ、私?!」


あからさまに驚く彼女に、追い討ちを…かける。





「うん。去年の学園祭ん時、恒生の弟とめっちゃ戯れてたじゃん。」


「……そりゃあ…源生くんが人懐こいからで……。」


「でも、スゲー癒された。どっちがコドモか…わかんなかったよ。」


「……すみませんねえ……。」








だから、少しくらい…気づけって。


言ってる意味…わかってんのか?






「向いてるって、俺は思うけどなあ…。」





彼女は…少しだけ、照れ臭そうに顔を赤くさせたけれど。


これが…遠回しの告白だなんて、思ってもいない様子。











代わりに…、しんちゃんからは…笑顔が消えていた。






「……今の…何?」


こっちに歩み寄ったヤツが、真剣な顔して…問い詰めてくる。



「さー…。そのまんまじゃない?」



「……え……?」




「あの人のボケ、なんとかしてほしーんだけど。」





ライバルへの、最初で最後のつもりの…牽制。


彼女の隣りに当たり前のようにいる…ヤツは。


最大の…脅威だったから。













「………それは…、無理だな!」




ハッキリとそう言ったのは…。しんちゃんではなくて。


いつのまにか…そこにいた、矢代先生だった。





「他力本願なんだよ、お前は。」



教科書でパシンと頭を叩かれたけれど。



後の卒業式で、ちゃんと彼女に忠告してやるのが…先生らしかった。








俺の鋭い勘は…見事的中して。



10年経ったその時に、先に彼女と繋がったのは……



やっぱり、しんちゃんだった。



だけど…、今も昔も、


ヤツを出し抜くことが…ちょっとした、優越感だったりする。



















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