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『もしもし~、早瀬?ごめん、ウチら多分近くまで来てるんだけど…、この道で合ってるのか全っ然わかんない!なんか…目印ないの?』
彼女が、ここに来ることがあろうとは…思ってもなく。
まさか、冗談半分で誘って…それに乗ってくるとも思ってなくて。
部活をサボって、自転車を走らせて帰って来た…夏の…午後。
散らかっていた部屋を、慌てて片付けて。
それから…
参考書やらも、クローゼットの中に…隠した。
家で勉強してたことなんて知られたら…ちょっと、かっこつかないから。
できるだけ、彼女が俺に抱くイメージを壊さないように…と、細心の注意を払って。
「……これだけは…いっか。」
ただ、ひとつだけ。
俺が目指す大学の参考書だけは…
机の上のブックエンドに…立て掛けた。
彼女の声を、電話越しに聞きながら…
リビングのガラス戸を開ける。
「まーっすぐ走って、多分1Kmしないくらいにある…青い屋根。コバルトっぽくて目立つから…すぐわかるよ。」
テラスの手摺に頬杖ついて。
彼女が、やって来るのを…
ひたすら待った。


