ねえ、君にもし、もう一度会えたなら。

よりにもよって、


「俺、目が悪いから…有難い。」


なんて、俺が使おうと思っていた言い訳を…使われてしまった。




「残り物には福があるなあー。」



恒生はそう言いながら、自分の机を取りに向かった。



全くの…作り損である。

誰も特のない…席替え。



なるほど。邪念は仏に…咎められたって訳だ。





「早瀬いいなー、一番後ろ。」



既に目の前に移動した彼女が…悪びれなく言った。



「残り物には福があるね!」



屈託ない笑顔を見せられたら…頷くほかない。




「日頃の行いがいーからね。」



ホントは…真逆だけど、ね。











だけど、



本当に…福はあったようだった。



隣りの席にはならなかったけど、一番後ろからは……教室の光景が、よく見えた。


それは…、彼女のことも。

ひとつだけ、後ろに下がったこの席は。誰にも見つかることなく…

それから、ごく自然と。彼女を視界に入れることができる。




だから、


そこから…この特権を、濫用した。


席替えの度に、イタズラを施して…


稲守紗羽より、後ろの席になるように…細工した。


もちろん、ハナミチ席は定番のお楽しみにして…


誰にも怪しまれることなく、それは…できた。












だけど……、



高校3年。



おそらく、最後の席替えかと思われるその時に…


初めて、ちゃんとした博打に出た。



最後の…運試しと思って。











そうしたら…。



彼女より、前の席になった。


まあ、こんなもんだろうと…諦めも気持ちが湧いた。


ちょうど良かった。


どうせ、別れる運命なのだから…。