帰りのHR。
開始のチャイムが鳴る前に…
俺は前に立って、席替えの説明を始める。
バラバラに席を立っていたクラスメート達が集まって来て…。次々と、クジを引いた。
黒板に書いた座席表と照らし合わせながら…。
それぞれに、席を移動する。
ちなみに、『ハナミチ席』は…教卓の真ん前。
誰もが避けたい席だからこそ…。
交換したがらないハズもない。
「出ねーな、ハナミチ…。」
そりゃあそうだ。
だって、俺が持ってるし。
稲守紗羽の順番が…回って来た。
「どれどれ?」
彼女が開いた用紙を見てみると。
なんと……、一番前、ハナミチ席の…隣り!
「…。あーあ。一番前かあ…。」
ガッカリする彼女だったけど、俺は内心…ドキドキしていた。
仕組んだつもりが…裏目に出た。
悪巧みは…、そうそう上手くいくはずなかったようだ。
だけど、交換さえしなければ。必然的に…隣りの席になる。
さあ、どんな言い訳をしようか…、と…考えながら。
並ぶ人が途絶えたそのタイミングで、引いてない人がいないかと…確認する。
「……え。もしや俺がハナミチ?」
手に握っていた紙を…箱の下に落として。
意気揚々に
クジを引く真似をすると……。
「……あれ?」
なぜか、用紙が…もうひとつ。
「ん?みんな、何してるの?」
「………?!」
遅れて教室に入って来たのは…恒生。
いつもとは違う光景に…、キョトン、としている。
「……席替えのクジ引きだよ。恒生さんも早くひきなよー?」
「ああ、そう。んじゃ。」
うっかりだった。
まだ、引いてないヤツが…いたなんて。
2分の1の…確率。
恒生が引いたのは。
「……は?なにこれ?」
ハナミチ席……。
「それ引いたヤツは、一番前のアソコ。だけど、よかったな!どこの席とも交換できる…ラッキーくじだ。」
最後に残されたクジを引いて。
俺は…それを、恒生に見せつける。
俺が引いたのは。
一番後ろの…まさに、特等席。
どんなクジ運だって思うけど、いい席すぎてもったいないけど。うん…、ハナミチ席には…敵わない。
これにヤツが飛び付かないはずもない。と、自信を持って掲げた筈が…。
ヤツは、クジと俺の顔を見比べて。
「イヤ、そこでいい。」
アッサリと……拒否!


