私の右隣りは、高校のベテラン先生で、辛うじて名前を覚えていたくらいの…関わりの薄い先生だった。
私のことは知らなくても、幼稚園の事とか、なにかと話題を振ってくれるから…気まずくならずに済んだ。
「…………。」
矢代先生は…どこにいるんだろう。
次第に入り乱れる、この大所帯の中で…
特定の人を探すのは、案外困難だった。
見つけられぬまま、しかたなく…先ずは上座にお酌するために、ビールを片手に…席を立った。
それから、幼稚園の先生がたへと…回り始めた時だった。
「「あ。」」
主任の隣りに…
ようやく、矢代先生の姿を見つけた。
「何処のべっぴんかと思ったら…。なんだ、お前かあー。」
憎まれ口を叩きながらも、目尻に…シワ。
「……すみません。もっと若手を呼びましょうか?」
「ああ?いや、いーよ。多少歳食ってる方が俺には性に合う。」
「先生はビールですか?」
「いや、……んじゃ悪いけど、焼酎梅割り持ってきてくれるか?3:7で。」
「……。焼酎7ですね?」
「あほっ!なんの仕返しだー!潰すつもりか。」
……バレたか。
会場の前方には、長テーブルが置かれてれいる。
その上に…
瓶ビールや、ジュース、お茶、焼酎。
色んな飲み物が並んでいて。どうやら…各々にそこから持っていくらしい。
紘子先生もまた、そこで…慣れない手つきで、ビールの栓を抜いていた。
「……えーと、コップは…、と。」
コップの有りかを探していると…。
「何か作りまましょうか?」
コップを片手に、若い男の先生が…
私に、そう訊ねて来た。
「……あ。さっきの…。」
くじ引きの箱を持ってた人だ。
「……俺、幹事なんで…。どうぞ遠慮なく。」
お肌がツルツル…。
新卒で入ったばかりの先生かな?
あどけなさが…残っている。
「ありがとうございます、でも…大丈夫です。」
コップだけを受け取って、軽く会釈すると…。
するり、と、手からそれが…奪われた。
「はい、焼酎梅割り。」
「…………!」
代わりに、梅の入ったお酒を差し出して来たのは…
早瀬。
「矢代先生に持ってくんでしょー?なら、これでOKだから。」
「……あ…、ありがとう。」
「どーいたしまして!ってか、ゆってぃー、お前も飲めや。」
早瀬はすぐに私に背を向けて、先程の先生に…絡み始める。
「……………。」
ゆってぃー?
……わかちこ?
てか、どっかでその呼び名を聞いたような…?


