私たち幼稚園の職員と、高校の職員は…。
年に一回、温泉宿での忘年会で…顔を合わせる。
同じ学園の仲間として、一年の労を共に労う親睦会でもあって。
有名宿で…一泊。
大いに…盛り上がる。
……が、しかし…。
私は、今…
緊張の極限であった。
理由は、もちろん。
高校時代にお世話になった先生方が、雁首を揃えているのだから…
そうならないはずも、ない。
癒しの温泉地が……
ここは、学校かと思うくらいに…。
歩く絨毯の上が、
真っ直ぐに延びる廊下のように。
もう、何人もの『先生』と…
すれ違った。
それから…。
もうひとつの理由は…、
やはり、早瀬の存在。
あれから、
あの、キスをした日から……。
今日初めて会うことになる。
平常心を保っていられるのか…?
ちゃんと、普通に話すことが…できるのか?
胸の高鳴りは…
増すばかり、だ。
「あ。大宴会場、あそこじゃない?」
紘子先生が指差す先には、沢山のスリッパが置かれてれいて…。
襖の奥からは、男性の談笑する声が…こちらにまで響いてきた。
「お疲れ様です。くじ、ここで引いてください。」
入り口の前には、テーブルが置かれていて。
高校の先生かと思われる若い男性が数名…くじ引き用の箱を、差し出した。
「え。席って…くじでくめるんですか?」
あわよくば紘子先生の隣りにって…思ってたのに……。
がっくりと肩を落としながら、しぶしぶとそれを引くと…。
私は、9番。
紘子先生は、43番。
見事に離れた数字を…引いてしまった。
襖をあけると、そこには…列を為して並ぶ御膳。
それに、立派な…ステージ。
圧倒されるような…光景。
ズラリと、並ぶ…顔ぶれを見ていると。
いち生徒だった自分が、ここに紛れることがおそれ多くも…感じていた。
そんな時でも、自然と…探してしまうのは。
早瀬の…姿。
「…………。」
開宴までは…あと、10分。
君の姿は…まだ、ない。


