さっきまで気にもならなかった鹿威しの音が…
カコンっと…大きく響いて。
「こ……、子供…可愛かったね。」
「……ああ。そうだな。」
なんとか…会話を繋ぐ。
「紗羽は子供好きだから…幼稚園を選んだ。」
「……うん。」
「……今年度で、契約は切れるんだろ?その後はどうする?」
「……今年…、うちの園の本採の求人が出たの。受けてみようか…迷ってる。駄目だったら、違う保育所とか…。」
「……そう。じゃあ…、タイミングが良かったかな。」
「………え?」
「……兼ねてから希望していた…仙台の支店への異動が決まりそうなんだ。ここからも、十分通える距離だろ?」
「……仙台…。」
希望…していた?
「紗羽はここからは…出るつもりはない。だから…俺が、こっちに来る。」
「…………。」
「結婚しよう。」


