やって来たのは、郷土料理が味わえる…料亭。
敷居が高くて、一度も入ったことはなかったけど…。
木造の赴きのある建物の中は、懐かしいような、田舎のおばあちゃん家を彷彿させるような匂いがして。
ほっと…
胸を撫で下ろした。
昔は民家だったらしい。
部屋の真ん中に置かれた囲炉裏が…
そんな雰囲気を、醸し出していた。
「……こーゆー料亭、私…初めて。」
「……俺も。ちょっと緊張する。」
小声でヒソヒソと話しながら…身を縮こませる。
私は車の運転を控えているから…自粛して、
透には、日本酒を勧めた。
「米所の地酒だから、美味しいよ。」
「……ん。今日はやめとく。」
「え?だって、ホテルに泊まるんでしょう?大酒飲みの透が飲まないなんて…。」
「……失礼だな、勝負時には飲まないんだよ。」
……勝負時…?
「……そういえば、学生時代も試合の前だけはビール飲まなかったね。……バスケは?続けてる?」
「ああ、流石に20代にはついて行けなくなったけど。」
「……そっかー…。」
彼は、中学からバスケをしていて。
身長190㎝の長身でもある。
インカレに出場するくらい、大学でも活躍していて…
東京の有名某スポーツ店の本社へと、現在勤務している。
出会ったのは……
友人の彼氏の応援に、大学での練習試合に訪れたのがきっかけだった。
友人を交えての交流が続いて…。
ゆっくり、時をかけて。何となく…二人で会うようになって。
彼が入社して2年目に…告白された。
彼と会うようになって、ここに帰って来る頻度は…極端に減って。
同時に、しんちゃんや恒生さんとは、そこで…疎遠になった。
それが、今また…みんなここに帰って来て。
再び繋がっているのだから。
人の縁は……分からないものだ。


