「紗羽…、さーわっ!!」
「……え?」
目が覚めると。
私は…リビングのソファーに寝そべっていた。
「……私、どのくらい寝てた?」
「うーん…、20分くらいじゃない?」
「……そう…。」
懐かしい夢を…見ていた。
「それよりアンタ!今日出掛けるって言ってなかった?もうすぐ2時になるけど…大丈夫?」
「………!大丈夫…じゃないっ!ありがとう、起こしてくれて。」
私はソファーから飛び起きて…、すぐさま、洗面所に向かった。
今日は…約束の日。
約半年ぶりに、透に…会う日だった。
「……なんちゅー夢を…。」
よりにもよって、そんな日に早瀬の夢を見るなんて…どうかしてる。
顔をばしゃばしゃと洗い、ふと…鏡を見ると。
「……………。」
どうしても、ある一点に…目が行ってしまう。
早瀬とキスした…唇。
ここ数日、こんなんだから…夢にまで出てきてしまったのか…?
「………間接キスも入れたら…3回…か。ノーカウントになんて…できないじゃん。」
思い出は、淡く、甘く…甦るばかり。
「……しっかりしろ、わたし!!」
まだ、何も…始まった訳ではない。
早瀬のことだから、また意地悪の大どんでん返しが待ってるかもしれないし。
鏡に、思いきり…水を掛けてやった。
水滴で…私の顔が、歪む。
透に会うことが…怖くなっていた。
自分の立場が、身の…置き方が、
分からなく…なっていたから。


