妙な視線を感じると思ったら、俺がペットボトルの蓋を開ける様子を…、不自然なくらいに、じっと、じーっと、見ていた。
お陰様で、悪戯ゴコロが…疼いた。
「………。……これって、間接キスになるネ。」
サラリと、そんな事を…言ってみる。
すると……
どうだろう。
彼女の顔は、みるみると真っ赤になって。
「やっぱ返して!」
俺の手から、ペットボトルを奪おうと…手を伸ばした。
自覚ナシだったのか。
つーか…、『しんちゃん』とやら、ちゃんと指摘してやれよ…。
「……アホだなー、『紗羽ちゃん』。」
俺はソレをひょいっと避けて。
「女に二言はナシ!」
さぞかし…ドヤ顔決め込んでいたのだろう。
勢いよく、それを口へと運んで…
「……………?!」
ぶっ…!
………噴き出した。
「…………あーあ、飲んじゃった。」
「……飲んだな。…いや、マーライオンしちまったな。」
彼女と、浅沼真哉が……ぷぷっと笑いを堪えている。
「可哀想に…、また、犠牲者が一人…。」
「……………は?」
いつのまにか、傍に立っていた…芳賀恒生が。
両手を合わせて合掌している。
「………。ちょっ…、なにコレ。……洗礼?」
『こもも』などと可愛らしい名前からはかけ離れた、パンチの利いた味。
むわっと口に広がる甘み…。
なのに、しょっぱくて…、フルーティー…。
「ごめんネ、これ…。」
奴ら三人が、俺の前に掲げたのは…。
アイスココアと、
オレンジジュースと、
それから……
弁当によく入っている、醤油差し。
よくよく見ると、ペットボトルの中身は…軽く濁っている。
「めっちゃ天然水じゃないじゃん。信じらんねー。」
からかったつもりが…
仇討ちされた?
「アハハ…、ごめんごめんっ!」
さっきの恥じらいは…演技だったのか。
彼女は、いよいよ腹を抱えて…笑いだした。
頬っぺたにまた…、ぷっくら笑窪。
これには怒る気も失せて…、つい、つられて…一緒になって、笑い合った。


