早瀬は、はあ~て、大きく溜め息をついて。
困った顔して…私を見る。
「………。したかったから…した。それだけだよ?」
「………。それだけって…。」
「今は、それだけってことに…しとく。」
「……………。」
「言っとくけど、簡単には靡かない紗羽ちゃんが…俺は好きなんだよね。だから、キスごときで追いかけて来られたら…困るんだけど。」
「………キス…ごとき?」
ごときって……!
「そ。…それなりの覚悟があってのことなら…いいんだけどネ。」
「…………。………早瀬。」
「ん~?」
「知りたいって…思わなきゃ良かった。」
「…………。」
そんなに簡単に、あしらわれるんだったら。
博打に出るようなマネ…しなかったのに。
「……知らない人みたい。」
靡いてしまったから、ダメだっていうの?
だったら、私は…どうしたらいい?
早瀬に対するこの思いを、どうやって…ぶつけたらいい?
「………幻滅した?俺って、結局…こーゆーヤツ。」
「……違う。」
「……へ?」
「……違うもん!」
「…………。」
「………早瀬は…人当たり良くて、人気者で…」
「……………?」
「……時々バカで、でも…頭は良くて。」
「……。……って、これって悪口?」
「言いたいことズケズケ言う癖に、肝心なことは言わなくて。芯が強そうに見せかけて…ホントは、寂しがりやで。」
「………。」
「悔しいけど、……憧れてた。一挙一動にドキドキして……。私には、眩しかった。」
「………。……全然、そう思ってるようには見えなかったけど。だって、他の人と俺に対する扱い、全く同じだったじゃん。」
「……そうかもしれないけど、」
「だから。……気になって。好きになったんだけどね?」
「…………。……好き?」
「うん。」
「誰が?」
「『俺』が。」
「……誰を?」
「『紗羽ちゃん』を。」
「………。……好き?」
「うん。」
「……嘘つき…。だって、彼女いたじゃん。」
「だって、誰かさんは一向に俺に振り向かないし。それに…、そういう年頃でしたから。」
「10年も、音沙汰なかったのに。」
「繋ぎ留める自信がなかったもん。だって、まだ18のガキだ。」
「………初恋…だったのに。」
「それは、……………。……はあ?ちょい待て、それは初耳なんだけど。」
「言わなかったもん。」
「………。……じゃあ…、同窓会で言った『好き』ってのは…ノリでいったわけでは…なかった?」
「……………。」
アレは……18の私に代わって、
精一杯の…告白だった。
なら…、早瀬も…?
あの時…、本当の意味で。
『好き』って…言ったの…?
あの場の雰囲気で流された訳じゃ…ない?


