「おま…、殺すきか?!」
首もとを抑えて、顔を歪めた君が…振り返る。
「そっちこそ、やり逃げ?!」
「「……………。」」
睨み合って…数秒。
よりにもよって…学校の前。
なんていう、えげつない言葉の攻防戦をしてたんだって…我に返るには。うってつけの、場所だった。
「「…………。」」
「………ぷは…っ!」
先に吹き出したのは、早瀬の方だった。
「ダメだ、マジでウケる…。紗羽ちゃん、スゲーでかい声で、すごいこと言ってるし。誰かに聞かれたかもしれないよー?それこそ、生徒とか。」
「やましいことなんてないし!」
「や、めちゃくちゃあったし!つか、もしや…さっきのキス、ノーカウント?」
キス、
そうだよ…。キス、されたじゃん!
呑気に笑ってないで…真面目に話してよ。
「てかさ、追いかけて来ちゃっていいのー?俺が彼氏だったら、させないトコだけど。」
「……それは…!」
「……でも、まあ…離れてるし、見えないから…いいのか?」
「え。」
「だって、俺はそっち側じゃないから…わかんねーもん。相手なんて、どーでもいーし。」
「…………。」
「……で?どーした、偽善者紗羽ちゃん。」
「偽善者なんかじゃない。」
「……じゃあ…、何?殴りにきた?」
「……。それも…違う。」
「………うん、だろうね。紗羽ちゃんが聞きたいのは…アレだ。なんで、キスなんてしたのかって…ことだろ?」
「……………。」
「ハイ、正解。分かりやす…。」
「……早瀬は。……早瀬は、こんな軽々しく…女の子に手出ししないって分かってる。いつもどこかで線引きして、踏み込まれないようにしてることも……。」
「……そこまで分かってて、今更理由とかって聞かなくてもわかるじゃないの?」
「……わかんないよ。いつも、最後にははぐらかして、手の内見せてこないじゃん。」
「はあ~?あれだけアピってんのに気づかない方が鈍感だっての!」
「ちゃんと…言ってよ。言わないと…わかんないよ、早瀬の考えてることなんて。」


