二つの中華まんを…交互に頬張って。
二人、リスみたいに…口をもごもごさせる。
「…………美味しいね。」
「うん、今日は…寒いからな。」
そうだ…、寒いからなお…
美味しく感じるのかな。
じゃあ…。
あの、暑い…夏の日は?
「ねえ、バニラアイスは食べなくていいの?」
「……。そういや、あれもコンビニの前で食ったっけ。てか、あれは…暑かったから。今はちょっと気分じゃないかな。」
大人になってから、こうやって…コンビニの前で食べるなんて…したことがない。
あの夏、早瀬としゃがみこんで…アイスクリームを食べた日が、
あれが…最後の記憶。
アイスクリームは、至って普通の味だった。
トクベツなものでも、何でもなくて…
『旨いって言っといて。でないと俺、ちょっと恥ずかしいし。』
『…………。…「美味しいよ。」』
ただ、顔を伏せて、顔を赤くする君の横顔に…
私の熱が。
トロリと…アイスを溶かした。
……美味しい、と言うよりは、
甘かった。
今ではもう、人目が気になって…とてもじゃないけど、できそうもなかったのに。
……不思議だ…。
「……これぞ、買い食いだな。」
「……だね、確かに。」
いい大人なのに、ココロは…あの時のまま。
甦ってくる…
青き心。
「……早瀬はさー…、今、一人暮らし?」
「うん。」
「ご飯は自炊してんの?」
「してたらここに来ないって。」
「……大変だよね。」
「……んー…、まあ、慣れたから平気。紗羽ちゃんは?料理とかするの?」
「ウチは母親が作っててくれるから…。」
「へー、そうなんだ。」
「………ねえ、こっちの生活は…どう?」
「どうって…。…楽しいよ?紗羽ちゃんこそ、楽しそうにしてるよね。」
「………へ?」
「運動会の…傘躍り。それから、………」
早瀬はそこまで言って。
途端に…プッと…吹き出した。
「え…?ちょっ…、何?」
「うん、思い出してさー…。今日みた写真。」
「……?写真?」
なんの…?
「矢代センセーからの、お土産。」
「…………。…………あっ!!」
『ははっ…バカめ、ナイススマイル激写ー。』
脳裏に…
矢代先生の意地悪な笑顔が、浮かんで来た。
「お土産って…、そういうこと?!もー…、やだ、どんな写真だった?!」
「どんなって…、うん、子供たちと超笑いあってる写真。」
「じゃあ…、なんで笑うのさ…。」
「うん。だって、俺…予言してたでしょ?」
「……?」
「紗羽ちゃんは。…保育士に向いてるって。」
「………!!」
「なーんて…、覚えてねーよな、あんな言葉。」
……思い出したんだよ、早瀬。
本当は、もしかしたら何処かで…覚えていたのかもしれないって…
最近、思うんだ。
ねえ、
さりげなく言った言葉だったと…思ってたよ?
君は、どうして…
やっぱりそれを、覚えていたの……?
「理想が、現実になった。てか…、予言が的中?……そんな、写真だった。」


