夕方…、
薄暗くなった外に出て…駐車場に置かれた車へと、乗り込む。
「……。……日が落ちるの、早くなったなあ…。」
夏場には、遅くまで園に残って仕事をしていた職員も…
自然と早めに仕事を切り上げて、帰るようになっていた。
教師である以前に、一人の…母で、妻であって。
スイッチを入れ替える…瞬間でもある。
「……今日のご飯なにかなー…。」
こんな、一人ごとが言えちゃうのだから…
まだまだ私は、甘ったれの幸せ者だと…気づかされる 。
ヒーターをつけて、冷たい手に…生温い風を受ける。
園の近くのコンビニの側で…信号待ち。
渋滞していて、なかなか車が進まないことに…少し苛立って。ちらりと…、脇を見てみれば。
「……おでん…、か。」
見つけてしまった幟に、「おでん」の文字。
誘われるかのようにして…
つい、ウィンカーを上げて、駐車場へと侵入する。
立ち寄ったそこには、本当におでんのいい香りが…漂っていた。
買おうかどうしようか…。
レジの側に置かれた、肉まんや、あんまんやらが…更に、私を誘惑してくる。
「…………………。」
夕飯が待っているといえど……。
ぐううっと鳴ってしまうお腹は…正直だ。
「仕事帰りには、甘いあんまんがいいんだよなー。」
「…………。」
隣のレジから…
店員さんと談笑する声。
うん…、分かる。
疲れてるときは…甘いものに限るもん。
「でも、小腹を満たすのには…がっつり肉まんがいいし……。」
そうそう、思いきりがっつきたい。
「すみません、あんまんと肉まん一個ずつ。」
あらら…、結局両方買うんだ?
つい、くすりと笑みが溢れて。
そちらへと、視線を移すと……。
その、声の主と…バッチリ目が合ってしまう。
「……ヨッ。」
「……………?!」
よっ、って……。
あれ…、いつから…こっちに気づいてた?!
「紗羽ちゃん、買い食い?」
なんてとこ…見られてしまったんだろう。
そこにいたのは…早瀬。
顔から蒸気が上がるんじゃないかって言うくらい…恥ずかしくなった。
「……買い食いって…。学生じゃないんだから…。」
「まあ、そりゃそっかー。」
早瀬の手には…レジ袋。
「………。早瀬こそ、コンビニ弁当?」
「ん。今日サッカー部夜間練習あるから…、今のうちに、学校で食べよーと思って。」
「…そうなんだー…。てか、いっぱい食べるんだね?」
「んー…、まあね。つか、運動会ぶりじゃん。久しぶり。」
「だよね、久しぶりー。」
矢代先生と早瀬のことを話したばっかりだから。
こっちは全然…久しぶりな感じはしないけどね。
「あ。レジ袋はいーです、そのままで。」
早瀬は、薄い紙に包まれたものを二つ、店員さんから受けとると…。
「まだ時間あるし、ちょっと外で話そうか。」
思いがけない…お誘い!
「……ん、わかった。」


